妖怪の絵が付いた焼酎まで発売されています。
セシールに持っていったらEちゃんは喜んでくれましたが味はまあ普通でした。
今日は妖怪に関する「おはなし」です。
トモは信州の人里近くの川に住む河童です。
河童というと実物を見たことのない人間たちは何やら
可愛いイメージを持っていますが、トモはとっても醜い河童です。
お父さんもお母さんもヌルヌルしていて
濁った緑色と茶色が混じったような汚らしい体です。
顔も常にエサを求めて川の中を這いずり回っているので
歯がむき出しになっていてとても下品です。
トモはまだ小さいころにクマに襲われて
片目がダメになってしまいました。
それで小さな河童の妹も怖がるくらい醜い顔になってしまいました。
でもトモは頭がよかったので魚を捕まえるのも一番で
人間に気づかれないように畑の作物を掻っ攫ってくるのも上手でした。
河童は人間に見つかると大変な目に合うので
絶対にその存在を知られてはならないのです。
だから畑の作物を盗むのにも工夫が要ります。
大泥棒ややり手のスリ師のように相手が盗まれたことも気づかないように
あっちの畑から少し、こっちの畑から少しと盗むのです。
仲間の河童たちは人間を恐れているのでなかなか畑に来る勇気がないようです。
トモは河童の世界でも醜いので、連れ合いを見つけることができませんでした。
取ってきた魚や作物をプレゼントしても
女の河童たちは「そこに置いて行って」というばかりで
一緒に滝遊びに行ったり河童プロレス(男女でするプロレス、結果はご想像の通り)
の相手をしてくれようとはしません。
両親が亡くなった後は兄弟姉妹からも疎まれ
孤独な河童になってしまいました。
そんなトモが恋をしました。
それは人間の赤ちゃんで、お春さんという農家の主婦が川に野菜を洗いに来るとき
連れてくる小さな赤ん坊です。
お春さんは耳が少し遠いので後ろに河童が近づいても気が付かないのです。
その赤ちゃんは川の土手の上の籠に入れられていて
いつも気持ちよさそうに眠っています。
赤ちゃんはトモが現れても全然怖がりません。
恐る恐るだっこしてみると柔らかくていい匂いがして
ニコニコとした丸い顔となめらかな皮膚の様子が天使みたいで
トモはいっぺんに好きなってしまったのです。
あるときお春さんが病気になって何日も川に来られなくなりました。
トモは赤ちゃんに合いたく会いたくてたまらなくなりました。
そして、ある夜とうとうお春さんの家まで来てしまいました。
お春さんの家は薄明るい光が点いています。
トモは匂いで赤ちゃんのいる部屋がわかりましたが
その部屋は戸締りが厳重で入れそうもありません。
しかしトモは雨戸の下の庭に座って
すぐ近くに赤ちゃんがいることを感じているだけで幸せでした。
トモは毎晩、お春さんの家まで来るようになりました。
そしてある夜、庭の雨戸の前で眠ってしまい人間に捕まりました。
村の衆が集まってきてどうするか相談しています。
見世物に売ったらどうだべ。という意見もありましたが
うんにゃ、ならねえ。河童がいる村なんてことがばれたら
ワシたちも疑われてしまうぞ。
長老の一言でトモは殺して埋められることになりました。
その時、お春さんが寝床から出てきました。
この河童は悪い奴じゃねえ。おらの赤ん坊をいつでもあやしてくれた。
離してやったらきっと村には寄り付かねえよ。
と言ってくれました。お春さんは知っていたのです。
長老はトモにいいました。
次にこの近くに現れたら命はないぞ。
そうしてトモは縄を解かれました。
トモは渓谷に帰りました。しかし赤ん坊のことが忘れられません。
村に行ったら殺される。しかし他に喜びのない彼は赤ちゃんだけが生きがいでした。
ついふらふらと村まで来てしまったのです。
ズドーン!鉄砲の響きは禁断の恋の別れの音でした。
土台、人間と河童が共存するのは無理な話だったのですね。
その村では人間の赤ちゃんに恋した河童の話は、今もひそかに語り継がれています。
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